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Case Study

地方公共団体

クライアント

地方自治体 健康福祉局 医療政策部

プロジェクト種別

地域包括ケアシステム構築支援

プロジェクト概要

■ 進まぬ地域医療構想
「地域医療介護総合確保基金」に基づき2012年より各自治体に対して毎年約1,000万円の財政補助が行わており、自治体毎に地域実情に合わせた施策と、実施効果の検証報告が求められている。これに伴い、各自治体では、地方公共団体や医師会、社会福祉協議会等の団体が主体となり、在宅医療相談室や、地域包括ケア推進会議体の開設が行われているが、中央官庁が要求している「地域実情に合わせた解決策と効果検証」が適切に行われ
ている自治体は少数である。
■ データに基づく実情分析とハード・ソフトの整備
とは言え、2025年問題はすぐそこまで迫っており、各自治体は、実効性のある施策を現場に落とし込まなければ、2025年以降に医療介護環境が崩壊しかねない。その解決には、「自治体ごとの実情」をまずは的確にデータに基づいて把握し、
事態データから将来予測需要データを算出し、現時点で存在する供給量と比較し、不足するインフラを明らかにする必要がある。更には、ハードとしてのインフラ整備はもちろん、医療介護の最大の特徴は「多職種連携」にあることから、これらインフラが有機的に連携する「ソフト」面での整備が不可欠である。
しかし、行政の地域包括ケア担当部門は、統計学や医療介護再作の専門家ではなく、医師会も町医者で構成されており医療介護政策の専門家ではなく、担い手・旗振り役が存在しない。それは特定の自治体ではなく日本全ての自治体に言えることで、過去、診療報酬制度や介護保険制度等に基づいて推進されてきた流れと、今回の、自治体ごとに一任する方法は全く異なるものである。そこで今回は、当社がこれまでの豊富な地域包括ケア構築支援事業に基づき、神奈川県内の某自治体から依頼を受け、当該自治体の需給実態をデータ分析、将来における需給推計を抽出し、現場多職種を取りまとめた協議体を運営しながら、実効性のある解決策を展開していくこととなった。

課題

■ 既得権益を守りたい介護事業者・後ろ向きの医師会
当該自治体は、在宅医療の発展が遅れてきたことから、その代役として介護事業者の台頭が目覚ましい地域であった。そのことから、自発的に介護連携協議会が発足し、長い歴史の中でその実権を強めてきた。医師会と介護連携協議会は、形上は医師会をトップとする関係性を取っていたが、実際は、介護連携協議会の会長が動かなければ何も動かない状況にあった。
 地域包括ケア推進事業は、介護連携協議会だけなく三師会、自治体、総合病院などの様々なステークホルダーが合議体の中で自治体独自のプランを推進していくものであるが、当該地区にて、事実上の在宅療養の旗振り役を担ってきた介護連携協議会にとっては、自身の独占的な既得権益や立ち位置が揺るぐことから、焦りがあった。協議会会長は、医師会に対して政治的に取り入ることに成功しており、医師会に代わって協議会がトップとなり地域包括ケア推進事業を担い、協議会の主要構成員である介護事業者の金銭的利益になる施策に持ち込みたいと考えていた。医師会もまた、在宅医療を担いたくないという考えの外来診療所院長で構成されていたことから、この責務を嫌い、協議会にそれを委ねたいと考えていた。
 しかしながら、地域包括ケア推進事業とはそもそも、専門的なデータ分析技術や、ハード・ソフト面での供給力向上(例:医療用麻薬等を用いた緩和ケア技術の向上研修・緊急時バックベッド連携システム等)を要求されていることから、ケアマネやヘルパーで構成される介護連携協議会がリーダーを担うには力不足であることは明らかであった。
 これに頭を抱えていたのが地方公共団体であり、推進しようにも医師会にやる気はなく、介護事業者は既得権益を守ることに必死で、実効性ある合議体や施策の展開ができずにいた。

解決策

■ 医師会を能動的に動かす
医師会がリーダー役を担う意味とは、医師というヒエラルキーの上位であることが理由ではなく、地域包括ケアにおいて24時間対応の医療供給こそが、安心した在宅療養を実現する上で最も不可欠であり、且つ現状の供給量が少ないためである。従って、自治体の狙いとしては、「医師会が能動的に活動しリーダー役を担うこと」が初期段階にて最大のテーマであった。
 医師会員が地域包括ケア推進事業への消極的な姿勢を示す理由の整理と、ボトルネックを解除するための解決策を見出すことが、医師会の積極参加のキーになることが判った。調査の結果、医師会員が地域包括ケア推進事業に消極姿勢である理由は、現在、医師会員の大半は、外来診療所の院長であり、外来医療で十分経営的安定が実現できている中で、わざわざ、在宅療養支援診療所のような24時間365日対応で、且つ高度な緩和ケアスキルが要求される医療にすそ野を広げるメリットがないためであった。また、年間数例の看取りを行う外来在宅兼業型診療所においても、在宅部門の強化充実を現状以上に図ることを躊躇する理由として、24時間対応体制や、緊急時の受入れ病院が少ないことが挙げられた。
■ 在支診の普及
 そこで、地域包括ケア推進事業の実行テーマとして、「在宅療養支援診療所の普及」を掲げ、在宅医療を行いやすいインフラ体制を整備し、地域の診療所が在宅医療に積極的に参入し、地域包括ケア推進事業そのものを主体的に推進できる体制を目指すこととなった。
 最も重要な要素は、インフラ整備であるが、特にソフト面でのインフラ整備が重要となる。具体的には、サステナブルな24時間体制を構築するための主治医・副主治医制度の導入、ICTを活用した多職種間の情報連携ツールの開発及び活用方法のレクチャー、緊急時に受入れ可能な救急病院を確実に確保する連携システムの開発であった。
 当社が支援を行った概要は以下の通りである。

支援内容

• 5歳階級別人口動態分析、短中期的人口動態予測
• 在宅療養受療率分析、在宅療養受療患者数推計
• 地域における既存在宅医による診療実態、インフラ充足実態調査
• 多職種に対する在宅医療におけるハード・ソフト面の供給過不足調査
• 在宅医療未参入診療所に対する参入障壁に関する定性的調査
• 主治医・副主治医体制による持続的24時間診療体制の構築
• 主治医・副主治医体制構築に向けたワーキンググループの創設
• 輪番制夜間対応における算定ルール等の策定
• ワーキンググループ会議体の運営及び管理
• 複数診療所間情報連携システム(ICTシステム)導入ルールの策定
• ICTシステムメーカー選定・発注
• ICTシステム運用ルール策定
• ICTシステム運用実績モニタリング調査
• 緊急時受入病院確保に向けたワーキンググループの創設
• 基幹病院院長及び地域連携室との交渉代行
• 地区版バックベッドシステムの構築
• バックベッドシステム運用実績モニタリング調査
• 在宅医療未参入診療所向け 在宅医療診療報酬点数研修会の開催
• 在宅医療未参入診療所向け 緩和ケアスキル研修会の開催(教員招聘)
• 在宅医療未参入診療所向け 在宅医療部門開設支援業務
• 在宅医療未参入診療所向け 在宅医療現場研修

事例

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